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「精神科看護師、謀反」 越智元篤の真意は如何に

投稿日:2006/02/18

 その歯科衛生士は、Dr.が来るまで私の歯を見てかなり専門的に説明してくれる。看護師の私がいうのもなんだが、かなり勉強されている印象を受けた。これも、その歯科のDr.の方針なのだろう。
 Dr.と歯科衛生士の治療過程の説明責任は詳しくないので触れないこととするが、どの科でも治療の助手役、病院でいうと看護師に活躍の場を与えるということは、看護師のモチベーションを高めさせることに繋がる。モチベーションが高まれば、当然のごとくレディネス(学びに対する精神面での構え)が整い、インセンティブ(学習意欲)も高まる。それは結果的に、病院であれば病院の、企業であれば企業のレベルアップにつながる。この理論は、どこにでも通用する法則であろう。
 雇用に対してもそうである。経営者が「雇ってやっている。看護師なんぞ数はいくらでもある」と高をくくっているような病院は、実質の看護レベルは向上しまい。経営者が内心どう思うかは自由としても、少なくとも、中央の舞台で躍らせてやるくらいの大きな気持ちで雇う必要はあろう。
 経営者の内心は個別(上司対部下の関係の上で)で話をすればすぐにわかる。それは業務上の会話ではなく、雇用契約関係等、双方が対等な立場であるべき場面での会話においてである。そこで、命令口調やタメ口を言うような経営者は、私の著書「精神科看護師、謀反」にも触れている“無能”な経営者といえよう。もちろん一括りに=(イコール)であるのかといわれれば、断定はできないが、往々にしてそうであろう。ただ例外的に“タメ口と丁寧語を部下やそのタイミングによって使い分けること”ができている経営者は注目すべき。逆に鋭い目を持った知的な経営者かもしれない。残念ながら、世間にそこまで戦略性に優れた個人病院の経営者は多いとはいえない。

 やや話を転換し、タイトルにある私の著作「精神科看護師、謀反」について述べる。
 この「精神科看護師、謀反」に対して、巷では良い感想がほとんどを占める中、ごく一部から①「暴露本である。名誉毀損である」とか、②「自分で精神科を悪く書いている」とか、③「精神科のイメージが悪くなる」他にも④「情報の漏洩だ」⑤「守秘義務違反だ」とか言う意見が少なからず耳に入る。残念ながら、本書はこのどれにも当てはまらない。これら①~⑤は、全て発言している人間の知識不足によるものである。役職に就かない看護師であれば、①~⑤に対しての誤解をこれから学び修正すればよいだけのことであるから、見ていてもさほど焦りは感じない。問題は、


※管理職にある人間がそれを理解していない

ということである。この程度の知識でスタッフに指導、さらには患者と関わり個人情報云々他を管理していると思うと一抹の不安を感じる。
 本書が、日本の精神科に対しての問題提起本であることを繰り返し述べていることはご存知かと思う。にもかかわらず、本書の主張を翻そう(意図の有無は問わない)と、言葉や表現を変えて①~⑤を本書に当てはめようとする者がいるが、それは解釈に無理がある。意見を翻そうとしている者のほとんどが①~⑤の意見のなかで、自らが表現を変えただけであることにも気付かず、同じことを繰り返し述べているという“箱の中の人形”であるかのような面白い現象もおきている。そこに、完全に美化された感情論が付属するからやや曲者である。①~⑤を発言すること自体、自分達の隠蔽体質を曝け出しているという矛盾にも気づくべきである。
 ここで色々主張してみたりもしているが、実は、こうして①~⑤のように意見が出ることこそが本書の目的に適っているので非常に嬉しくもある。目的は本書「精神科看護師、謀反」の“あとがき”に書いているので読み比べていただければ幸いである。今後もさらに活発な意見を求めたい。